「銀行員はどう生きるか」

2018年6月20-26日  浪川攻

 

銀行に変化の波が押し寄せている。収益環境の悪化により、何とかして稼が続ける道を探している。メガバンクの戦略は、コスト削減と関係会社全体の収益力向上だろう。しかし、顧客の利便性を無視したコスト削減を進めたり、融資という本業をおろそかにした関係会社紹介を進めていては、顧客の不信感が募っていく。銀行に辛うじて残っている、信頼感安心感を失ってはいけない。

 

◼️いま銀行業界でなにが起きているのか

 邦銀3メガバンクは2017年11月にそろって大量人員・業務量削減方針を打ち出した。国内リテール部門の赤字、国際部門の縮小により、大幅な収益力改善が求められたのだ。銀行の収益環境は非常に厳しい。本業である預貸業務は低金利下にあって利ざやをとれない。人口減少・後継者不足により経営基盤は崩れつつある。この状況下において、これまでの労働集約的な高コスト業務わ続けることができなくなってきた。

 コスト削減は、リテール部門においては店頭作業を減らし、業務を事務センターに集約することで、人員を削減する。法人部門では、本部の非採算部門のロボット化を進める。これらの施策によって浮いた人員を、営業に回すことで、コストを抑えつつ売り上げのトップラインをあげる。

 

◼️銀行じゃなくてもいいという現実

 メガバンクの思惑通りにコスト削減ができたとしても、銀行でなくてもバンキングサービスを提供できるという現実に対応しなくてはならない。

 現状、フィンテックプレイヤーが参入してきている分野は、個人の決済・運用である。決済の場が銀行から移るということは、決済情報の蓄積ができなくなるということだ。個人決済が奪われれば、個人向けローンも奪われる。芋づる式に、銀行業務は奪われていく可能性がある。

 

◼️米銀はどうなのか

 米銀は、リーマンショックが直撃したため、収益環境が悪化し、2008-2016年にかけてコスト削減を進めた。リーマンショックの影響が小さかった邦銀よりも、コスト削減に早く取り組んでいたといえる。

 米銀も邦銀も、店頭の人員削減を進めてきたという点は同じだ。しかし、邦銀が店外ATMやインターネットバンキングといった低コストチャネルに顧客を誘導し、店舗削減を進めたのと異なり、米銀は店舗を増やしている。米銀は、伝統的なフルサービス店舗を減らす一方で、小型軽量の店舗を増やしたのだ。

 米銀は、銀行の最大の武器を理解している。このデジタル時代においては、革新的なフィンテックサービスを提供したとしても、すぐに陳腐化してしまう。終わりのない競争を続けることとなる。そんな中で銀行が顧客を獲得し続けるには、対面ビジネスの質の高さで勝つに限る。