「14歳からの社会学」

2018年5月26-28日  宮台真司

 

 宮台真司さんの本を読むのは、これで四作目になりました。どの本を読んでも、目からウロコな見解で溢れています。この感覚は、内田樹さんの作品を読む感覚に近いです。宮台真司さんと内田樹さんは、所々で似た主張をされているように感じます。いまの私では、なんとなく似てる部分がある以上のことは言えないのですが…。

 本作は「14歳からの社会学」というタイトル通り、中学生を対象としています。しかしまぁ…、簡単ではないです。私も今年で25歳なのですが、意味不明な箇所も多々ありました。おそらく、宮台さんも14歳でこの本の全てを吸収できるとは思ってないでしょう。人生の指針として、何度も何度も読みたくなるように、丁寧に作られた本だと感じました。

 

◼️自分と他人

 宮台氏が考える「人が幸せに生きる」ための2つの条件は。まず、「自由」であることです。しかし、自由であるとは、なんでも好き勝手できるということではありません。自由であるための2つの能力「選択肢を知る能力」「選ぶ能力」が大切なのです。

 さらに、「自由」であるためには、その土壌として必要なものが、共同体・個人ともにあります。共同体には、「多様性」が必要です。個人の自由を外的な要因によって妨げられない集団が望ましい。個人には、「尊厳」が必要です。自分に対する「尊厳」があるからこそ、「自由」に活動することができます。

 宮台氏は、この「自由」「尊厳」に「承認」を加えて、1つのサイクルが作られると述べています。「自由」に試行錯誤する→結果、他者からの「承認」が得られる→自分の存在に対する「尊厳」を確保できる→さらに「自由」に試行錯誤する、という好循環です。

 このサイクルが回っていれば、幸せな人生と言えるのでしょう。

 

 しかし、いまの社会では、このサイクルがうまく機能していません。機能していないのは、「承認」の部分です。「承認」は他者から与えられるものですが、現代においては、他者というものがよくわからなくなっているのです。市場経済の拡大に伴い、家族をベースとした地域共同体は崩壊してしまいました。いい学校・いい会社も、もはやいい人生を保証してくれません。誰が「承認」を与えてくれるのか、なにを試行錯誤すればいいのかがわからないのです。

 自分自身で「自由」の目的地を決めなくてはならない。そんな時代なのです。

 

◼️理想と現実

 日本人は、仕事を生活と一体化させる傾向にあります。「自分には向いた仕事があって、仕事は人生に生きがいを与えてくれる」そんな考え方を、無意識に採用している人は多いです。この考え方をしていていいのでしょうか?プライベートも仕事を、全て充実しているはずだ。そうでなくてはいけない。というのは、虫が良すぎるのではないでしょうか。自分は何者で、何がしたくて、何が苦手なのか。自分に必要なものはなにか。それを手放さないために、最低限なにが必要なのか。それを考えるべきではないでしょうか。